公園と畑に挟まれた築45年の平屋の古民家を事務所兼住居にリノベーションしました。
公園と畑 /事務所と住居/ 既存部と改修部といった対要素をできるだけ等価に扱い、「生活という物語の舞台」としての住居を設計することを意識しました。
シーンの連続により物語性を構築していくこと、それはシークエンス(場面転換)という概念とは少し異なります。
建築が主役ではなく、あくまで生活が主役の物語をつくるために、空間を背景化していく方法です。
全ての要素を消すのではなく、強い要素に対しては強い要素を、弱い要素には弱い要素をノイズキャンセラーのように逆位相の波長を重ね、それぞれの要素が少しずつ微弱な繋がりをもって散在しているアンビバレントな状態を目指しました。
南側の明るい公園側を住居スペース、北側の静かな畑側を事務所スペースとし、2つのスペースの対比的な関係を崩すために住居と事務所を貫通する大きなテーブルを配置しました。
公園と畑に挟まれた環境に身を置く心地良さを増幅させる装置として「公園側の住居」と「畑側の事務所」の境界面に同じ素材・同じ形状のテーブルを挿入することで、風景の繋がりを発生させています。
現存する空家の多くはアノニマス(作者不明)な建物ですが、それを活用し、新たに手を加える際、既存空間が持つ要素や形式や積み重ねられてきた時間を尊重し、新しさのエッジが際立たちすぎないように、ある種の謙虚さを持つように心掛けたいと思っています。
自分とは異なる文脈を受け入れ、過去を対象化せず、相対的に扱わないことで、新しさと古さの対立を乗り越えることができるのではないでしょうか。
photo/Yousuke Ohtake
掲載誌
withはぴe vol.39 リノベーションで叶える理想の住宅特集
LiVES No.108 クリエイターの家特集
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賞
Archdairy Building of the year 2020 awards ノミネート